技法 | 木版画 |
サイン | 左下に印 |
額 | 額装 |
サイズ | sheet size : 104.2×56.0 cm image size : 100.6×52.2 cm |
制作年 | 1939 |
鑑定書 | 棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付 |
文献 | 棟方志功著、「棟方志功全集 第2巻 神々の柵(1)」、講談社刊、1980年、p.187、No.79 |
普賢菩薩の柵は棟方志功の初期を代表する連作《二菩薩釈迦十大弟子》の中でも、特に人気の高い作品で1939年に制作された。
棟方は興福寺の釈迦十大弟子像を見て感銘を受け、それらの姿を彫ろうとした。
当初は十大弟子のみを制作するつもりだったが、六曲一双の屏風構成とするために普賢菩薩と文殊菩薩を追加し全12点の連作として完成させた。
視力が弱かった棟方は、目に見える形を忠実に再現するのではなく、心が動いたものだけを大胆に描いた。
その特徴は初期の作品に顕著であり、《二菩薩釈迦十大弟子》においても、版木の端までいっぱいに使って彫られた力強い造形と、考え抜かれた白と黒の配置が印象的な作品となっている。
《二菩薩釈迦十大弟子》は、1955年にサンパウロ・ビエンナーレ版画部門最高賞、1956年にヴェネツィア・ビエンナーレ国際版画大賞を受賞するなど国際的にも高く評価された。
棟方自身もこの連作に深い思い入れを抱いており、晩年には「志功の七不思議」のうち上位をこの作品群が占めていると語っている。
本作の『普賢菩薩の柵』は、12点の中でもっとも人気のある作品である。
慈悲と実践の象徴とされる普賢菩薩の姿を、穏やかな眼差しと優雅な指の動きで表現し、観る者に精神的な安らぎを与える傑作となっている。
《二菩薩釈迦十大弟子》の版木のうち、『普賢菩薩の柵』と『文殊菩薩の柵』は戦災で焼失したため、後に改めて彫られている。
今回の出品作品は1939年に彫られた初版の作品であり、極めて貴重な一点である。